【公式】福岡市東区香住ヶ丘の酒見内科胃腸科

潰瘍性大腸炎全国webセミナーにて講演を行いました。

2024年1月16日に潰瘍性大腸炎全国webセミナーに演者として講演を行いました。
このセミナーは防衛医科大学校の穂苅教授(総合司会)、大阪医科薬科大学教授の中村教授(演者)と共に行われました。

私の方からは実臨床に基づいた潰瘍性大腸炎に対するベドリツマブ(エンタイビオ)の寛解導入を考えるという演題名で講演を行い、潰瘍性大腸炎治療においてベドリツマブがどの程度効果を示すのか、有効性を示すまでの立ち上がりは早いのかを中心に述べました。

潰瘍性大腸炎の患者さんの腸の中では免疫細胞(特にリンパ球)によって炎症が起きています。その免疫細胞は大腸の血管から腸管の粘膜内に入りこんできます。リンパ球にはインテグリンという手があり、血管の壁にはインテグリンの手を捕まえる手(MadCAM-1)があります。
ベドリツマブは難治性潰瘍性大腸炎の患者さんに用いることができる薬剤であり、薬剤の特徴として大腸の血管から腸管の粘膜内に入ってこないようにリンパ球と血管の手をブロックする薬となります。そのため、腸管選択的な薬剤であり全身におよぼす影響が低く副作用が少ない薬剤となります。

この薬剤の有効性は臨床試験においてベドリツマブ2回の投与によって投与6週の時点における有効率は47.1%、寛解率は16.9%と有意にプラセボよりも高い結果となっています(表1)。




しかしながら日本で行われた臨床試験ではベドリツマブ3回投与を行った初回投与から10週の時点における有効性は39.6%、寛解率は18.3%とプラセボとの差を認めませんでした(表2)。

 

 

そこで私達は本邦における潰瘍性大腸炎に対するベドリツマブの臨床効果がどの程度存在しているのかを確認するべく、戸畑共立病院と札幌BDクリニックにてベドリツマブが投与された55例の患者さんを対象に有効性の検討を行いました。
その結果、投与から2週、6週の有効率・寛解率はそれぞれ33%・25%、56%・53%と半数の患者さん方が有効性を示しており、本邦で報告されている他の施設のデータとほぼ同等でした(表3)。

 

そして、この薬剤の有効性が得られ易い患者さんは症状がそれ程強くない患者さんであることも判明しました。
エンタイビオは有効性が得られ難い薬剤と言われていたこともありましたが、
難治性潰瘍性大腸炎の患者さんでも重症度の高くない患者さんであれば、2回の投与によって半数以上の患者さんに有効性が得られると考えています。
また、2回の投与を行っても初回の投与から6週の時点で有効性が得られていない患者さんではその後の有効性が得られる可能性が低いことも分かってきましたので、6週時点でその後のベドリツマブの継続投与について判断してもよいのかもしれません。
ここについては今後、さらに症例を集めて学会などで報告をしたいと思います。

その後の穂苅先生、中村先生とのディスカッションも大変有意義でした。

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